犬 腸リンパ管拡張症
腸リンパ管拡張症(IL)は、腸のリンパ管が拡張してリンパ液が漏れ出し、タンパク質、脂肪、ビタミン、リンパ球などが失われる疾患です。
犬では蛋白漏出性腸症(PLE)の代表的な原因の一つであり、慢性的な低タンパク血症や栄養障害を引き起こします。
犬の腸リンパ管拡張症の症状
腸リンパ管拡張症の症状は、慢性に進行するものが多いですが、急激に悪化する場合もあります。
- 慢性下痢:脂肪便が多い(白っぽい、油っぽい)。
- 体重減少:長期的な栄養不足。
- 腹水:低アルブミン血症による腹部膨満。
- 浮腫:特に四肢や顔面。
- 食欲不振または異常な食欲。
- 嘔吐:消化管の異常反応。
- 倦怠感:全身的なエネルギー不足。
- 呼吸困難:胸水の蓄積が原因の場合。
犬の腸リンパ管拡張症の原因
腸リンパ管拡張症は、原発性(特発性)または続発性として分類されます。
1. 原発性(先天性)
特定の犬種に好発し、遺伝的素因が疑われる。
- 好発犬種:ヨークシャー・テリア、ノルウェジアン・ルンドハウンド、バセンジー。
2. 続発性(後天性)
他の疾患による腸リンパ管圧の上昇やリンパ管の閉塞が原因。
- 右心不全:リンパ管内圧の上昇。
- 腫瘍:腸内またはリンパ節の圧迫。
- 慢性炎症性腸疾患(IBD):腸壁のリンパ管に炎症が及ぶ。
- 感染症:寄生虫や細菌感染。
- 門脈圧亢進症:腸管血流の異常による。
腸リンパ管拡張症の診断
腸リンパ管拡張症の診断は、症状、検査結果、画像診断、組織検査を総合して行います。
1. 問診と身体検査
- 症状の経過、体重減少、食欲や排便状況を確認。
2. 血液検査
- 低アルブミン血症:典型的な所見。
- 低グロブリン血症。
- 低カルシウム血症:脂肪の消化吸収障害による。
- リンパ球減少:リンパ液の喪失。
3. 糞便検査
- 寄生虫や感染症を除外。
4. 超音波検査
- 腸壁の肥厚、リンパ管の拡張、腹水の有無を確認。
- 典型的には「腸管の二重線構造」がみられる。
5. 内視鏡検査と生検
- 内視鏡検査:腸内を直接観察し、リンパ液漏出や浮腫を確認。
- 生検:腸壁の組織を採取し、リンパ管の拡張を確定診断。
腸リンパ管拡張症の治療
治療は、症状の管理と基礎疾患の治療を組み合わせて行います。
1. 食事療法
- 低脂肪食:リンパ管への負担を減らす。
- 高消化性フード:腸に優しい食事。
- 中鎖脂肪酸(MCT)を含むフード:リンパ管を通らず直接吸収される。
- ビタミンとミネラル補充:特に脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を補う。
2. 薬物療法
- 抗炎症薬:プレドニゾロンなどのコルチコステロイド。
- 免疫抑制薬:シクロスポリンやアザチオプリン(重症例)。
- 抗生物質:腸内細菌のコントロール。
- 利尿薬:腹水や浮腫を軽減。
- 整腸剤・プロバイオティクス:腸内環境の改善。
3. 補助療法
- アルブミン補充:重症例では輸液療法を行う。
- 輸血:必要に応じて血液製剤を投与。
- ビタミンB12補充:吸収不良による欠乏を補う。
Q&Aから学ぶ
腸リンパ管拡張症の犬の管理には、十分なカロリーとタンパク質を供給できる栄養バランスのとれた、消化の良い超低脂肪食または低脂肪食を与えることが重要です。
食事性脂肪の摂取を制限すると、腸のリンパの流れが低減し、乳び管膨張が減少し、タンパク質の損失が最小限に抑えられます。
腸リンパ管拡張症では、2〜3週間以上の下痢などの消化器疾患を示すことが多いです。
また、たんぱく質や脂肪、リンパ球(白血球のひとつ)などを含むリンパ液が漏れ出ることで、低たんぱく血症になり、重度であれば、腹水や胸水、むくみが現れます。
リンパ管拡張症は完治が難しいことから、継続的な治療が必要になります。 また、予後はさまざまで、短期間で亡くなってしまうケースもあれば、治療にうまく反応してくれれば数年にわたって生きられるケースもあります。
腸のリンパ管がなんらかの原因により閉塞もしくは破綻を起こし、小腸からのリンパ液が漏れ出ることで低蛋白・低アルブミン血症を引き起こす病気で、蛋白漏出性腸症の主な基礎疾患の一つです。
リンパ管拡張は、背景に腸炎やリンパ腫と呼ばれる腫瘍が隠れているケースも少なくありません。
腸全体でリンパ腫の細胞が増殖する場合や一部で増殖し、腸閉塞を起こすこともあります。
症状は食欲がなくなり、体重が減少します。 消化や吸収が悪くなり、嘔吐や下痢が続くこともあります。
腸リンパ管拡張症の犬の管理には、十分なカロリーとタンパク質を供給できる栄養バランスのとれた、消化の良い超低脂肪食または低脂肪食を与えることが重要です。
食事性脂肪の摂取を制限すると、腸のリンパの流れが低減し、乳び管膨張が減少し、タンパク質の損失が最小限に抑えられます。 低脂肪食は低カロリーです。
原発性の要因として、リンパ管の先天的形態異常(リンパ管形成不全、胸管の閉塞)がある。 続発性の要因として静脈圧あるいは門脈圧の上昇(ことにFontan手術、右心不全、肝硬変)、リンパ管周囲からの圧迫による機械的狭窄あるいは閉塞(悪性腫瘍、感染症、膠原病、後腹膜線維症など)がある。
発生リスクの高い犬種はボクサー、ゴールデンレトリーバー、バッセトハウンドなどが挙げられていますが、米国でのデータになりますので、日本での飼育犬種とは多少異なります。
逆に発生リスクの低い犬種はダックスフンド(日本では例外)、ポメラニアンが挙げられています。
犬で多く見られる多中心型という、全身のリンパ節が腫れるタイプでは病期が進行してこなければ目立った症状は見られず元気なことが多いです。
しかし、無治療でいると急速に全身臓器に浸潤して約1ヶ月で死につながると言われています。
犬の腸リンパ管拡張症の予後
- 予後は原因疾患、治療の反応性、発症時の重症度に依存します。
- 特発性リンパ管拡張症:早期診断と管理で良好な場合が多い。
- 続発性リンパ管拡張症:基礎疾患が重篤な場合、予後は不良。
- 完全な治癒は難しく、慢性的な管理が必要となることが一般的です。
犬の腸リンパ管拡張症の予防方法
- バランスの取れた食事:腸管への負担を減らすフードを選ぶ。
- 寄生虫予防:定期的な駆虫薬の使用。
- 定期健康診断:症状の早期発見につながる。
- 適切な基礎疾患の治療:心疾患や炎症性腸疾患の管理が重要。
腸リンパ管拡張症は、慢性の低タンパク血症や栄養不良を引き起こす深刻な疾患です。
早期の診断と適切な治療が症状の緩和に重要であり、低脂肪食や抗炎症薬などを活用した管理が中心となります。
飼い主と獣医師の密な連携が、犬の生活の質を維持するために欠かせません。
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