犬 慢性肝炎
慢性肝炎(Chronic Hepatitis)は、肝臓に持続的な炎症が長期間にわたり続く疾患で、犬にも見られます。
この病態は、肝臓の機能が徐々に低下し、最終的には肝硬変や肝不全を引き起こす可能性があるため、早期の発見と適切な治療が重要です。
犬の慢性肝炎の症状
慢性肝炎の症状は、初期段階ではあまり明確ではないことが多いため、症状が進行するまで気づかれないことがあります。
しかし、以下の症状が見られることがあります:
- 食欲不振:犬が食べたがらないことがよくあります。
- 体重減少:食欲が減少し、栄養吸収が不十分なため、体重が減少します。
- 元気消失:犬が元気を失い、活動的でなくなることがあります。
- 黄疸(皮膚や目が黄色くなる):肝臓の機能が低下し、ビリルビン(赤血球の分解産物)が蓄積するため、黄疸が現れることがあります。
- 嘔吐や下痢:消化不良や肝臓の機能低下により、嘔吐や下痢が見られることがあります。
- 腹水(腹部の膨張):肝臓の障害が進行すると、腹水がたまることがあります。
- 毛の質の低下:栄養不足や肝臓の機能障害により、毛の艶がなくなり、抜け毛が増えることがあります。
これらの症状は、他の疾患にも見られるため、慢性肝炎が疑われる場合には詳しい検査が必要です。
犬の慢性肝炎の原因
慢性肝炎の原因はさまざまであり、以下のような要因が関与しています:
1. 感染症
- ウイルス性肝炎:犬伝染性肝炎(CAV-1)など、ウイルスが原因で慢性肝炎が進行することがあります。
- 細菌感染:細菌や寄生虫が肝臓に感染し、慢性の炎症を引き起こすことがあります。
2. 自己免疫疾患
- 免疫媒介性肝炎:免疫系が誤って自分の肝臓を攻撃し、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。これは、免疫系が過剰に反応することで発生します。
3. 薬物や化学物質の影響
- 一部の薬物や化学物質(例えば、抗生物質や抗真菌薬、ステロイド、毒素)によって、肝臓にダメージが与えられ、慢性の炎症が引き起こされることがあります。
4. 中毒
- 食物や植物の摂取:カカオやアルコールなど、犬にとって有毒な物質を摂取することが原因で慢性肝炎が発生することがあります。
5. 肝臓に対する長期的なダメージ
- 脂肪肝(脂肪肝疾患):肥満や食事の偏りによって肝臓に脂肪が蓄積し、慢性の炎症を引き起こすことがあります。
- 肝臓の静脈や胆道の障害:肝臓に血液や胆汁の流れが悪くなること(例えば、肝静脈閉塞症)が原因で慢性肝炎を引き起こすことがあります。
慢性肝炎の診断
慢性肝炎の診断は、病歴や症状を基に行われ、いくつかの検査が必要です。
1. 血液検査
- 肝機能の検査:ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALP(アルカリフォスファターゼ)、ビリルビンなどの肝臓の酵素を測定します。これらの数値が高い場合、肝臓に何らかの問題があることを示唆します。
- 血液の総蛋白やアルブミン、コアグレーション因子(凝固因子):肝臓が適切に機能していない場合、これらの値にも異常が見られることがあります。
2. 超音波検査
- 肝臓のサイズや形状、腫れ、石や腫瘍の有無、腹水の有無を確認するために超音波検査が行われます。
3. 生検(肝臓の組織を採取)
- 慢性肝炎の診断を確定するために、肝臓の生検を行い、炎症の程度や原因を特定することがあります。
4. X線検査
- X線によって肝臓の大きさや腹部の状況(腹水など)を確認することがあります。
慢性肝炎の治療
慢性肝炎の治療は原因に基づいて行われますが、一般的な治療方法は以下の通りです:
1. 支持療法
- 栄養管理:消化不良や体重減少を防ぐため、高消化性で栄養価の高い食事を与えることが重要です。場合によっては、少量を頻繁に与える方法が推奨されます。
- 輸液療法:水分補給を行い、体液バランスを保つために点滴が行われることがあります。
2. 薬物治療
- 免疫抑制薬(ステロイドなど):免疫媒介性の肝炎が原因の場合、免疫抑制薬が使用されることがあります。
- 抗ウイルス薬:ウイルス性肝炎が原因の場合、抗ウイルス薬が投与されることがあります。
- 抗生物質:細菌感染が原因であれば、抗生物質が投与されます。
- 抗酸化薬:肝臓の細胞を保護するために、抗酸化薬や肝臓保護薬が使用されることがあります。
3. ビタミンKやその他の補充
- 肝臓が損傷していると、血液凝固に関与するビタミンKが不足することがあるため、補充が行われることがあります。
Q&Aから学ぶ
犬の慢性肝炎の症状 慢性肝炎の症状はまず元気や食欲の低下などが見られ、一見加齢による症状のようにみえてしまうことがあります。
重度や末期の肝炎では、腹水や黄疸(おうだん)などが症状として現れます。
他には、肝臓は血液の凝固に関わる因子を作っているので、肝臓の機能が落ちると出血しやすい状態になることがあります。
犬の慢性肝炎が引き起こされる原因にはさまざまなものがあります。 若い犬が発症する場合は、遺伝的な要因が疑われます。
そのほか、有害物質が犬の体内に入り、肝臓へダメージを与えたケースや、ウイルス・細菌によって急性肝炎が引き起こされ、急性肝炎が長期化してに慢性肝炎に発展するケースなどがあります。
肝臓病が進行すると、肝細胞の壊死、肝硬変などにより肝機能が低下すると、低アルブミン症、BUNの低下、高ビリルビン血症、高アンモニア血症などを発症します。
その痛みや気持ち悪さなどから食欲が低下してしまいます。 また、味覚や嗅覚が変化して、食欲不振になることもあります。
肝臓は自己再生能力の高い臓器でもあります。 もし手術などで肝臓の一部を失ったとしても、(切除する大きさや場所によりますが)数ヶ月程度でもとに戻ってきます。
体中の毒や老廃物を集め、その処理を引き受ける肝臓はダメージを受けやすく、こうした再生能力が必要です。
犬の慢性肝炎の予後
慢性肝炎の予後は、早期に発見し、治療を開始した場合、改善することがあります。
しかし、進行した場合や治療が遅れると、肝硬変や肝不全に進行することがあり、生命に関わることもあります。
慢性肝炎の予後は、原因や治療の効果、肝臓の損傷の程度に大きく依存します。
犬の慢性肝炎の予防方法
慢性肝炎を完全に予防することは難しいですが、以下のような方法でリスクを減少させることができます:
- 適切な食事管理:肥満や脂肪肝の予防のために、栄養バランスの取れた食事を与えることが重要です。
- 有毒物質の摂取を避ける:カカオやアルコールなど有害な物質を犬が摂取しないように管理します。
- 定期的な健康チェック:肝機能のモニタリングを行い、早期に問題を発見して治療することが予防につながります。
慢性肝炎は肝臓に持続的な炎症を引き起こし、肝機能が徐々に低下する疾患です。
原因には感染症、自己免疫疾患、薬物中毒、脂肪肝などがあり、治療は原因に応じて行われます。
早期の診断と治療が予後を改善しますが、進行した場合には肝硬変や肝不全に至ることもあります。
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